バックヤード
昨日から古いハードディスクやUSBメモリを引っ張り出しては、旧作のデータが残っていないかを探している。大学生の頃、読売新聞が主催していたコミュニティサイトでも一所懸命投稿していたのを思い出して、ウェイバックマシンでアーカイブを探り、佳作選出されたタイトルを3本ほど思い出した。
あとは、新しく構築中の世界観に合わせて再構成、新たに生み出せばいい。高三の文化祭で書いた短編集の原稿は、流石に見当たらない。コレは諦めて新たにやろう。
当時ハマっていた漫画やアニメに影響されて紙とペンで書いていた中学時代、高校時代の各作品、各原稿も大枠は覚えている。深く考えず、ライブ感で成立させていたものをマトモにしつつ、もう一段、二段深いところまで捻ればよさそうだと気がついたから、この辺も改めて書くとしよう。
そうすると、某SNSでやってたパロディ、未完の卒業制作、放り出したままの未完作も含めると、10本弱ぐらいは検討し直す必要があるってことか……。
一人でブツクサ呟きながら、データの山に向かっていると、ドアがノックされた。最初は風でも吹いたか、気のせいだと思っていたが、どうやら本当に来訪者がいたらしい。
「え、最初から見てた?」
それならそうと、一言言ってくれればいいのに。かすかに開いたドアが閉まり、うっすら埃が積もっていた椅子が、微妙に動いた。ああ、なるほど、そういうお客様か。
「わざわざ来てもらって申し訳ないんだけど、まだ、新しい構想の世界観に、名前もついてないんだ。今からというか、まだまだ当分先だよ」
そう言うと、不意にひゅっと風が頬を撫でた気がした。
「まぁ、それでもいいんなら、散らかり放題だけど、ゆっくりしていって」
新しい世界観に合わせた作品はまだだけど、読めるものが全くない訳でもない。とはいえ、待たせすぎるのも申し訳ないし、短編、掌編、ショートショートあたりから整合性は棚に上げつつリリースする方がいいのかな。
ショートショート数本と、比較的長そうな作品の初回、だよなぁ……。古いタイトルと記憶を呼び覚まして、当時どんな作品を書いていたか、脳裏に思い描く。
こうしてゆっくり思い返すと、文体もさることながら、作風も相当変化している。ディティールに凝るのは今後も変えない予定だけど、若干ハートウォームに行き過ぎているから、もっと鬼畜、ハードなテイストにしてもいいんだろう。
そうそう、星新一っぽさを目指して短編集、掌編集を作ったんだっけ。
「そう。君が思った通り、大した才能があるタイプじゃない」
視線を上げて、闖入者の方をじっと見る。
「なのに、物書きとして半端なままウェブ屋さんやって、執筆活動を中断しながら今に至る、どうしようもない奴だよ」
そんな人間を相手に、どう思うかは君の自由。まぁ、わざわざこうやって最後まで読みに来るぐらいだから、嫌いじゃないんだろう?
「ま、時々覗きに来てよ。暇潰しぐらいにはなるからさ」
さ、来訪者の相手はそこそこに、世界観構想とリメイクに取り掛からねば。それでは、また今度。