7月21日(金)

 金曜日の夕方に、アルプラザの食品売り場でレジに並んでいるのは久しぶりかもしれない。亜衣と映美の二人を連れながら、大人一人でそこそこ混雑するところに突っ込んでいくのはちょっぴり怖かったけど、二人とも大人しく、お利口さんで成長を感じた。ご褒美に、普段なら滅多に買わないポケット菓子も2つ、3つカゴに入れてしまった。
 康徳さんに頼まれたのはネギだけだったのに、会計を終え、サッカ台で手提げ袋に荷物を詰め終えると、そこそこ大きな荷物になっていた。どうせ明日も買い出しするんだけど、まぁ、いいか。
 週末の夕方、フードコートには学生さんが多い気がするけど、そもそも、もうそろそろ夏休み? 来週には色んなところで小学生や親子連れも見かけるようになる、か。シャトレーゼとかケンタッキーに後ろ髪を引かれながら、アルプラザを後にする。
 亜衣と映美に気をつけながら、「もう直ぐ帰る」と康徳さんにメッセージを送る。すぐに「了解」と返事が帰ってきた。向こうはもう落ち着いている?
 すぐ隣を行き来する自動車や、向かいからやってくる自転車に気をつけながら、川を渡り、住宅街に入っていく。亜衣が先に自宅のドアを開ける。扉で手を挟まないでと祈るように見守りながら、彼女が離したドアに手を伸ばす。奥から、康徳さんの「おかえり」という声が聞こえてくる。
 映美と一緒にリビングへ入ると、康徳さんはキッチンから顔を出した。私たちに「おかえり」と言った。私は手提げ袋を食卓に置き、中身をそこに出す。彼は「買い出し、ありがとう。後は、よろしく」と言うと、両手を洗い、亜衣と映美を洗面所に連れて行く。
 私はお菓子をストッカーに仕舞い、残りの食品を冷蔵庫にしまうべく、キッチンに足を踏み入れた。餃子を放り込んだスープと、チャーハンのセットという段取りらしい。スープは出来上がっていて、チャーハンは今から炒め始めるようだ。
 とりあえず流しで手を洗い、買ってきた白ネギを刻む。スープとチャーハンのどちらに入れるのか、どんなチャーハンにするつもりなのか、戻ってきた本人に聞いてみよう。
 ほんの数分で、娘二人を連れた康徳さんが戻ってくる。彼は私の顔とキッチンを見るなり、「ネギはチャーハンかな。スープは温めるだけ」と言った。
 エプロンをつけたままの彼を見つめていると、「あ、じゃあ、こっちを頼む。そっちは最後まで僕がやるよ」と、彼は取り込んでくれていた洗濯物を指差した。私は手を洗い、タオルで手を拭って、キッチンから出た。康徳さんから娘二人を引き継いで、入れ替わりに彼に調理を再開してもらう。
 私はテレビをつけ、子どもたちが興味を持ちそうな番組にチャンネルを合わせると、畳まれていない衣類に手を伸ばした。亜衣と映美はすぐにテレビに夢中になり、大人しくはないものの、自分たちだけで遊んでくれている。
 キッチンからは美味しそうなゴマ油と中華スープの匂いが漂ってくる。洗濯物を畳み終えたら、食器の準備ぐらいは手伝わなきゃ。週末の天気予報も、そろそろチェックしておかないと。半ば無意識に両手を動かしながら、この後の段取りに思考を巡らせた。

初稿: 改稿:
仮面ライター 長谷川 雄治
2013年から仮面ライターとしてWeb制作に従事。
アマチュアの物書きとして、執筆活動のほか、言語や人間社会、記号論を理系、文系の両方の立場から考えるのも最近の趣味。