11月22日(水)

 食卓で、テレビの前で遊ぶ子供らの様子を眺めながら、チャットツールやメールボックスを定期的にチェックする。会社員ではないから休日前ということもないし、向こうも向こうで祝日だろうと何だろうと仕事があれば動く人たちだろうけど、今日のところは、僕が送ったメールやメッセージに対して返事が来なければ、店仕舞いしようと思っている。
 キッチンでは芽衣が、晩ご飯のカレーを温めていた。
「明日までは残らないよね?」
 僕は仕事用のツールを立ち上げたまま、明日や週末用のイベント情報を検索し始めた。芽衣はカレーをゆっくりかき混ぜながら、「うん、食べ切ると思う」と、換気扇の音に負けないように答えてくれた。
 仮に残ったとしても、容器を移して冷凍でもして、一人前のカレーうどんにでもして食べるだろう。彼女のカレーうどんも美味いんだけど、僕は中々ありつけない。
 食べ切るようであれば、外で晩ご飯を食べても良いな。ただ、二人を連れての夜の外食はまだシンドいかもしれない。無理なく日中で引き上げて、夜は夜で何か考える方がいいのかな?
 一人で妄想の世界に浸っていると、いつの間にか午後七時を過ぎていた。急ぎの用事っぽかったメールもチャットも返事が来ていない。メールは後日に返すとして、チャットツールの方はステータスを離席中に変更し、こちらも後は24日の朝以降に返事する旨を送っておいた。
 それぞれのツールを終了し、パソコンの画面を閉じた。娘が二人ともテレビに食いついているのを確かめてから、ササッと仕事部屋へパソコンを置きに行く。電気も付けずにドアを開け、机の上に置いて、横に放置してあった電源を繋いだ。通電のランプを確かめて、リビングから聞こえてきた芽衣の呼びかけに、「は〜い」と答えてそちらに戻る。
 亜衣と映美は、二人ともいつの間にか両手をしっかり洗って、それぞれ自分の席についている。僕も一旦リビングに顔を出してから、洗面所で手を洗ってリビングへ戻った。皆んなが待っている食卓について、両手を合わせた。亜衣の声に合わせて、「いただきます」と唱和する。  子供らの口に合わせた甘みの強いカレー。芽衣が入れてくれたビールを飲んだ。
「やっぱり、全然違うよね」
 芽衣は昼間に食べたカレーを思い出しているらしく、自分の作った二日目のカレーとビールを味わいながら、小難しい顔をしている。久々に食べた、しっかり辛くてスパイシーな大人向けのカレーは、流石にコレとは全く違う。カレーといえば、ほとんどコッチになって久しいお陰で、外で食べるカレーは非常に新鮮だった。
「コレはコレで好きだけどね」
 僕がそう言うと、彼女は「まあね〜」と少々自慢げに言った。
「今年のカレーは、次が最後かな」
 芽衣の言葉に、僕は「え、もうそんな時期?」と壁のカレンダーに振り返った。概ね月に一回のペースで出てくる我が家のカレー、次に作るとしたらクリスマスの時期か、完全な年の瀬か。
「チキンも、予約するならそろそろやんないとね」
 芽衣はついでのようにボソッと呟いた。
 そうだ。もうそろそろクリスマスの算段も考えないと。あっという間に年末進行も考えなきゃいけなくなってくる。今年のクリスマスはどうするか、毎年のように訪れる悩みの種が、今年もまたやってきた……。

初稿: 改稿:
仮面ライター 長谷川 雄治
2013年から仮面ライターとしてWeb制作に従事。
アマチュアの物書きとして、執筆活動のほか、言語や人間社会、記号論を理系、文系の両方の立場から考えるのも最近の趣味。