1月17日(火)

 テレビは朝から阪神大震災の特集をやっていた。もうそろそろ30年前の話。在京系の全国ネットでは当時の映像と追悼式典の映像とを流すぐらいで、恒例行事は終了した。
 5年前、この辺りを襲った大阪北部地震の痕跡は、流石に目立たなくなっている。新型コロナも含めた災害続き、延々とブルーシートが残ったままかと思いきや、最近はほとんど見られなくなった。
 夕方の日課となった散歩を兼ね、西河原公園をグルグル周り、太田のイオンへ入る。年末に買ったお酒が切れ、いつもの関西スーパーとは目先を変えて、こちらのリカーショップを覗いてみる。これという目ぼしいものは見つからなかったが、地元の清酒と読み方が分からない芋焼酎とを一本ずつ購入した。
 財布から、本屋でもらった控えが落ちた。リュックに入れた酒瓶に気を付けながら、小さな紙を拾い上げる。そうそう、コレも行かないと。
 エスカレーターで二階に上がり、コジマのゲームコーナーをチラッと長め、ふたば書房の前に行く。レジに向かい、注文書の控えを出すと、「浪川」の名札をつけた女性が応対してくれた。
「武藤さまですね。少々お待ちください」
 流れるような動きでバックヤードに入り、賑やかな表紙の本を持って戻ってくる。
「こちらで、お間違いないですか?」
 浪川さんは、ゲームの攻略本を持って見せてくれた。「間違いありません」というと、「お包みしますか?」と聞いてくる。
「いえ、手提げ袋だけ」
「有料になりますが、よろしいでしょうか?」
 「ええ、結構です」と答えると、厚手のビニール袋を用意してくれた。支払いを済ませながら、どこかで見覚えのあるような女性を頭の上から下まで、ジッと眺める。
「もしかして先日、図書館でお会いしました?」
 浪川さんはにこやかに笑みを浮かべ、カウンター越しに商品を手渡してくれる。
「ありがとうございました」
 浪川さんは深々と頭を下げる。私は後ろ髪を引かれる思いもありながら、次の客へレジを譲った。彼女は目の前の客に応対する。
 マスクの下をやっと見た。誰もがハッとするような美人ではないが、ちょっぴり儚げな京美人っぽさがある。スッとした姿勢もあって、和装がとても似合いそうだ。
 手に下げた攻略本の重さと、背中の酒瓶の重さを感じながら、エスカレーターを降りる。食品売り場も見て帰ろうかと思いきや、流石に特売日の夕方で人が多い。諦めてイオンを出る。
 次に智希が来るのはいつになるか分からない。明日とか、明後日にでも、幸弘の家に行って攻略本を届けてこよう。
 賑やかな西河原公園の横を抜け、総持寺の駅へ向かう学生さんの後ろをついていく。私の後ろから、イオンから出てきた3人乗りのママチャリが駆け抜けていく。
 安威川の方から吹いてくる風には、公園の緑の匂いが載っている。
 171号線のところで道路を二度渡り、関西スーパーの方へ足を向ける。向こうに見えた自転車を避け、後ろからやってくる自転車の気配にも気を配る。代わり映えのない、いつもの景色。
 目新しい芋焼酎をどう飲むか。ああでもない、こうでもないと考えながら住宅街へ入っていく。

初稿: 改稿:
仮面ライター 長谷川 雄治
2013年から仮面ライターとしてWeb制作に従事。
アマチュアの物書きとして、執筆活動のほか、言語や人間社会、記号論を理系、文系の両方の立場から考えるのも最近の趣味。