4月28日(金)

 喫茶店を出て、衣料品コーナーをぐるっと周り、1階まで降りるエスカレーターに乗る。前を歩く郁美さんは領収書を財布に仕舞いながら、「ご足労いただいて、本当にすみません」と言った。
「いえいえ。それより、ごちそうさまでした」
「明日はその分、よろしくお願いします」
 彼女は1階に着いたところで腕時計を見ると、「すみません、私、急ぎますんで」と少々慌てた様子で真っ直ぐ外へ出て行った。
 金曜日の夕方、食品売り場も奥のフードコートも賑わっている。私も郁美さんのようにそのままバスで真っ直ぐ帰ってもよかったけど、あまり来ないアルプラザの中をグルっと見てから帰ろうかしら。
 水尾に住んでた頃は平和堂もよく行ったけど、今の駅前通り界隈ではJR駅前の阪急オアシスか、その裏手のサンディに行くぐらい。市役所近くの業務スーパーもたま〜に見るけど、お父さんと二人であの量は中々食べ切れない。
 ふらふらとフードコートの方へ歩いてみるものの、学生さんやご近所らしい皆さんがいっぱいいて、しばらく待っても座れる気がしない。たまにはマクドナルドでジャンクフードにありつく手もあったけど、バスに乗って持ち帰るほどではない。
 手前のパン屋さん、シャトレーゼも気になるけれど、何か一つぐらいお土産に買って帰ろうか。アルプラザへ来る途中にあったパン屋さんも美味しそうだったし、ここは甘いものにしておこうかな。
 洋菓子とかケーキも美味しそうだけど、そうそう、かしわ餅。白いこし餡とよもぎの粒餡がセットになった奴と、ピンクの味噌餡も一つ買って帰ろう。レジの横に置いてあったアップルパイも一緒に買って、一つにまとめてもらった。
 あとは、適当に食品売り場を見て行こう。朝の食パンとヨーグルトは月曜日の分まであったと思うけど、日曜日のお昼と晩ご飯をどうしようか。調味料で切らしたものは何かあったっけ。
 買い物カゴをカートに乗せ、特設青果コーナーから見て回る。豆ご飯はこの間やったし、アスパラも割と食べたのよねぇ。ブロッコリーを一つと、きゅうりを一袋にしようかな。
 グルっとカートを動かして、常設の野菜もチェックしていく。いつものお店ではあまり見かけない、野菜用調味料なんか見かけてしまうと、ついついセットでカゴに放り込んでしまう。できるだけ重たいものは買わないようにして、軽そうな変わり種、限定フレーバーだけにしよう。
 そう心に決めたのに、お酒のコーナーで物珍しい缶ビールと缶チューハイを2本ずつ選んでしまった。カード入れの中から久々にホップカードを取り出して、ホップポイントを加算していく。半自動のレジで一瞬戸惑ったものの、レシートにはちゃんとポイント加算ができた旨が載っていた。
 ちょっぴり重くなってしまった荷物を提げて、アルプラザの外に出る。バス停に近い出入り口には、「頭上注意」の注意書き。上を見上げれば、燕が巣を作っていた。
 確か、目の前の通りを左へ抜けて、交差点をさらに左へ折れたら、バス停だったはず。手前のパン屋さんには、機会があればまた来よう。美味しそうなパンの匂いに後ろ髪を引かれながら、奥に見える交差点を目指して足を動かした。

初稿: 改稿:
仮面ライター 長谷川 雄治
2013年から仮面ライターとしてWeb制作に従事。
アマチュアの物書きとして、執筆活動のほか、言語や人間社会、記号論を理系、文系の両方の立場から考えるのも最近の趣味。